木材:キリ 桐(ゴマノハグサ科 Paulownia tomentosa)
■分布
北海道南部から南の各地に植栽されていますが、天然のものはありません。有名な産地は、福島県(会津桐)、岩手県(南部桐)、さらに新潟県、茨城県などが挙げられます。しかし、最近では日本でキリの需要が多いことから、中国、台湾、米国、フラジルなど海外諸国で植栽されたものが、大量に日本に輸入されているのが現状です。同類には、タイワンギリ:P.kawakamii、ココノエギリ:P.fortuneiなどがありますが、国産のものとはほぼ見分けがつきません。そのため、婚礼家具の代表とされるキリ箪笥のうち、かなりの割合のものが、外国育ちのキリを使ったものと言われています。その昔「娘が生まれたら、キリを植えて嫁入りのときに伐って箪笥をつくってやる」というようなことが言われ、実際に行われていました。そのくらい成長が早く、短期間で木材が得られる樹種なんです。キリを植える習慣はさすがに減ったでしょうが、キリの箪笥は婚礼家具の一つとして、依然、日本の風習として根付いています。
■木材
年輪の境界に大きい道管が帯状に配列する傾向がありますが、あまりはっきりはしません。肌目はやや粗です。心材は淡褐色で、辺材はそれより淡色な程度ですから、両者の差は著しくありません。ときに、材面がやや紫色を帯びることがあります。気乾比重は0.19~0.30(平均値)~0.40で、日本産の中では、最も軽軟です。加工しやすく、キリで作られた製品は寸度安定性が非常に高いのが特長です。その特長こそが、種々の家具に用いられる理由の一つで、密閉度の高いものを作ることが出来るのです。軽軟なため、下駄にした場合も、土の細かい粒が木材にくい込むようになり摩滅が少なくなるのです。
■ 用途
家具(箪笥など)、器具、建具、箱、楽器(琴など)、彫刻、下駄、羽子板などが知られています。
参考(引用):一般財団法人 日本木材総合情報センター