木材:ヒバ、アスナロ(ヒノキ科 Thujopsis dolabrata)
■分布
この類は日本にのみ産し、本州中南部、四国の一部、九州などに分布します。変種のヒノキアスナロ:var hondaeは、青森および北海道南部に分布しています。アスナロという名前は“最高のヒノキに明日にはなろう”という未来への希望を表現するものとしていろいろな形で用いられているので、何処かでこの言葉に触れたことがある人は多いのではないでしょうか。ヒバは、能登半島では広く造林されており、アテと呼ばれています。このアテのなかにはマアテ、クサアテ、カナアテなどの品種があります。この類の木材は、今まではどちらかといえば、産地および周辺の地域で用いられており、名前が知られている割に、木材そのものの知名度は高くはありません。
■ 木材
この類の木材の特徴は、独得の強い臭気があることで、それにより他の木材とは容易に区別することができます。この木材はヒノキチオールという、養毛剤の原料にも使われる独特の成分が含まれています。耐久性が高く、水湿にも耐えるので、土台などに用いられることが多く、平泉の中尊寺のように、周辺にヒノキの良材がない場合には仏閣などの建築にもよく用いられてきました。気乾比重は0.37~0.45(平均値)~0.55です。強さがあり、かつ耐久性があるため、産地以外でも、木造住宅の土台に使う角材としての需要があります。産地の周辺では、ヒバの柱を多数使っている住宅も少なくありません。心材は、淡黄色で、辺材は黄白色のため、色の差は少ない方です。年輪内の細胞の形の違いが少なく、肌目は精です。
■ 用途
建築、とくに保存性が高く、強いので土台、根太などに用いられ、器具、風呂桶、漆器素地(アテ:能登地方の輪島塗)などにも用いられます。現在では、ベイヒバが輸入されて、同じような用途に用いられているため市場での競合が厳しくなっています。
参考(引用):一般財団法人 日本木材総合情報センター